いま、くまもとで。

 

71日(金)

人生初の熊本入り。

 

大きな地の揺れがあってから、3ヶ月経とうとしている。

空港は通常どおり、思ったより閑散としていなくて

外国人もちらほら見かける。

空港から市街地へのバスも人がたくさんで、

ここはここで日常が動いているんだと感じる。

 

Airbnbのおにいさんに、宿を案内してもらう。

淡々と説明される。これも、いつもどおりなんだろう。

おにいさんは地震のことを話さない。

 

少し休んでから、熊本の市街へ向かう。

わりと、いつもどおり。

のように見えたけど、たまに家のタイルがくずれていたり

「要注意」「検査済」の紙が家の入口に貼られていたりする。

事務所を引っ越して営業を続けている会社もあれば、

お休み中だと紙を貼り出している会社もある。

「頭上注意」もたくさん貼り出してあるけど、

入口が「頭上注意」って普通に使う建物としてはけっこう怖いよね。

その他にも「ああ、あれも地震でこわれてしまったのかな」

と勝手に推測するけど、そもそも私は熊本に来たことがない。

いつかの時点の昔と比べられない。今の姿しか知らないのだ。

 

熊本現代美術館の「かえってきた!魔法の美術館」展を見に行く。

おそらく地元の、ちいさい子どもや高校生と一緒に

身体を思いっきり動かしながらアートを楽しむ。笑う。

ああなるほど、アートってこういう役割を持つんだ、と実感する。

たぶん、エンターテイメントってこういうときに「ムダ」だと言われやすい。

確かに、企画から撤収までお金も手間も大いにかかる。

でもきっと、ひとは「ムダ」と言われるものにきっと笑顔をもらうんだ。

っていうことを、一緒に遊んだちいさい男の子に教えてもらった。 

この特別展は一度開催したものをこのタイミングでもう一度やることに決めたらしい。

少なくとも私は、見ることができてよかったと思った。

 

市の中心部、アーケードにたどりつく。

ドトールもあるしスタバもある、ケーキ屋さんがなぜか多くて

デパートもあって東京と同じようなお店が並んでいる。

そこまでは、いつもどおり。

その中に、本当にたくさんの「がんばろう」の言葉と、くまもんがある。

シャッターがしまっているお店の「閉店中」の紙に、

再開待っていますの寄せ書きがたくさんある。

あちこちで工事している。

そしてその中にいる人たちは、たぶん今を生きている。

 

アーケード街を抜けて、熊本城にたどりつく。

「ああああ……」と声がもれて何も言えなくなる。

中に全く入れないことさえ、ちゃんと知らなかった。

カメラを向けることさえためらわれる。心がずきずきする。

他にも、無言で熊本城を見つめている人が何人かいる。

地元の高校生がその隣を通る。楽しそうに笑っている。

今の日常をめいっぱい生きている。

 

私は、熊本の今しか知らない。

笑いながら帰っていた高校生も、美術館を楽しんでいた男の子も、

きっと必死で今を生きているんじゃないかと思った。勝手な推測だけど。

以前の熊本の姿と比べて嘆きたい気持ちももちろんあるんだろうし、

熊本のひとたちの気持ちを推し量ることは私にはできないけど、

少なくともわたしは、今を生きて今熊本でできることをするのみなんだな、ともう一度思った。

 

というわけで、#ジモコロ熊本復興ツアー、いってきます。

 

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